南スーダンのファッションシーン 希望と創造性が紡ぐファッションの物語
内戦と混迷を経て、服はただの衣装ではなく「未来を描く言語」になる
アフリカ大陸で最も若い国家、南スーダン。長年の紛争や政治的不安の影で、ファッションはかつて日常から遠いものとされていた。しかし2025年、この地のクリエイターたちは、服を「国民のアイデンティティを再定義し、痛みを癒やすためのメディア」へと昇華させている。
1. 現場の熱狂:第10回「South Sudan Fashion Week」の開催
2025年8月2日、首都ジュバのピラミッド・コンチネンタル・ホテルにて、「South Sudan Fashion Week」が記念すべき第10回大会を開催した。

10周年のマイルストーン
「戦火の国」というイメージを塗り替えるべく始まったこのイベントは、2025年に過去最大規模のデザイナーとモデルが集結。オーディションには、その圧倒的な身体能力と存在感を武器に世界を目指す若者が国中から殺到した。
CASCO 2025との連動
同年12月には、文化スポーツオリンピック(CASCO 2025)の一環として「カルチャー・ファッションショー」も開催。1,000人以上の若者が参加し、ファッションが平和構築と国民の連帯(Unity)を促す重要なプラットフォームとして機能している。
2. 世界が平伏す「南スーダン・ルック」とトップモデルの躍進
現在、世界のランウェイにおいて「南スーダン系」は一過性のトレンドではなく、美のスタンダードを再定義する存在となっている。

Anok Yai(アノック・ヤイ)の栄冠
2025年12月、ロンドンで開催された「British Fashion Awards」にて、南スーダンにルーツを持つアノック・ヤイがモデル・オブ・ザ・イヤーを受賞。彼女はスピーチで「黒い肌は呪いではない」と語り、故郷南スーダンの平和を強く訴えた。
次世代のスターたち
先駆者アレック・ウェックから、Adut Akech(アドゥ・アケチ)、そして2025年のパリ・ファッションウィークで脚光を浴びた Awar Odhiang(アワール・オディアン) など、南スーダン系のモデルがシャネルやプラダといったメゾンの顔を務めている。

「モデルの輸出」から「産業の育成」へ
彼女たちの成功は、国内の若者に「ファッションは世界への扉である」という強烈な希望を与えており、モデルエージェンシーがジュバで次々と設立される原動力となっている。
3. “物語を語る服” ─ 伝統とレジリエンスの融合
南スーダンのデザインには、過酷な歴史を生き抜いた「レジリエンス(回復力)」が宿っている。
民族のコードを現代へ
ディンカ族やヌエル族の伝統的なビーズワークや、牛の角をモチーフにした造形。これらを現代的なドレスやスーツに昇華させるスタイルが2025年の主流だ。
Winnie G Fashions(ウィニー・ゴディ):
南スーダンを象徴する存在として注目されるのが、Winnie G Fashions だ。これは南スーダン人デザイナー Winnie Godi(ウィニー・ゴディ) によるブランドで、内戦という逆境の中から立ち上げられた。
彼女のキャリアはルワンダでのファッションショーデビューから始まり、ガーナ、ケニア、タンザニアなど複数のアフリカ各国のステージで作品を披露した経験を持つ。2019年には Tokyo Africa Collection に参加し、アジアでのデビューも果たした。

また、東アフリカ最大のファッションショー Swahili Fashion Week では東アフリカデザイナー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされ、STAアワードを受賞するなど、評価も高い。彼女は南スーダンのファッション業界の復興と、世界で活躍することを夢見て創作活動を続けている。
Winnie G Fashions のスタイルは、伝統と現代性を織り交ぜながら、色彩豊かで個性的なシルエットを用い、着る人の個性と文化背景を引き立てるデザインが特徴だ。
2025年の現在地
南スーダンのファッションシーンは、経済インフラとしてはまだ形成途上にある。しかし、UNESCOの報告が示す通り、アフリカ全体のファッション産業が25%の経済成長を達成しようとする中、南スーダンはその「美の源泉」として比類なき存在感を放っている。
世界を席巻するトップモデルたちの活躍と、ジュバで芽吹く地場デザイナーの創造性。この二つが結びついたとき、南スーダンは「資源の国」から「クリエイティブの聖地」へとその姿を変えるだろう。
